企業概要
事業内容とリスク
株式会社アイリックコーポレーション(IRRC Corporation)は、「保険×テクノロジー」を中核とする企業であり、保険の販売から代理店支援システム、AIによるOCRや検索サービスまでを幅広く展開しています。グループ構成は、保険販売を行う株式会社ライフアシスト、システム開発を担う株式会社インフォディオなどで構成され、保険業界における垂直統合モデルを確立しています。
主力事業は「保険販売事業」「ソリューション事業」「システム事業」の3本柱です。
保険販売事業では、来店型保険ショップ『保険クリニック®』を全国に展開し、現在およそ70店舗の直営店と200店舗近いFC店を運営。自社開発の「保険IQシステム®」を用いて、顧客の既存保険内容を分析し、20社以上の保険商品を比較・提案する仕組みを提供しています。保険相談から契約、アフターフォローまでをワンストップで行う点が強みであり、契約継続率も95〜97%と高水準を維持しています。
ソリューション事業は、保険代理店や金融機関向けに「ASシステム」「AS-BOX」などの販売支援ツールを提供。これらはライフプラン提案や契約分析機能を備えており、業界標準として多数の金融機関が導入しています。さらに、フランチャイズ(FC)部門では、全国の加盟店に対し教育研修、システム提供、ノウハウ共有を行い、加盟店の売上向上と運営効率化を支援しています。
システム事業では、グループ子会社のインフォディオが中心となり、AI-OCR「スマートOCR®」やAI検索システム「brox」、電子帳簿保存クラウド「DenHo®」を開発。特に「スマートOCR®」は非定型帳票のデータ化に対応しており、国税庁や警察庁などの公的機関にも採用されています。保険業務だけでなく、公共・製造・金融など他業種にも提供を広げており、安定した収益基盤を形成しています。
リスク要因としては、主に以下の点が挙げられます。
・取引保険会社への依存リスク:主要な収益源が保険会社からの手数料収入であるため、手数料率の見直しや経営状況の変化に影響を受ける可能性があります。
・情報漏洩・システム障害リスク:AIやクラウドを活用する事業特性上、個人情報や顧客データの管理が最重要課題です。2024年には保険会社出向者による情報漏洩事案も発生し、再発防止体制の強化が図られています。
・法規制の強化リスク:保険業法改正により代理店の体制整備義務や顧客本位の運営が一層求められており、法令遵守体制の維持が必須です。
総じて、アイリックコーポレーションは「保険×AI×デジタル化」により、保険業界の効率化と透明化をリードする存在として独自のポジションを築いています。
今までの業績
同社の業績は、ここ数年で着実に拡大しています。2021年6月期から2025年6月期までの連結売上高は約4.6億円から9.4億円へと2倍以上に増加。経常利益も37億円から75億円へと大幅に伸びました。純利益は2023年に一時的な減益がありましたが、その後急回復し、2025年6月期には約4.3億円と過去最高益を更新しています。
特筆すべきは収益の多角化と利益率の改善です。
保険販売事業の拡大に加え、ソリューション事業やシステム事業の売上比率が上昇しており、単なる保険代理店から“テック企業型の成長構造”へ転換が進んでいます。2025年の営業利益率は約8%と業界平均を上回り、自己資本比率は64%と財務体質も良好です。ROE(自己資本利益率)は11.6%と高水準を維持し、配当性向は69%と株主還元にも積極的です。
配当実績の推移を見ると、1株当たり配当金は2021年の12円から2025年には30円へ上昇。これは創業30周年・保険クリニック25周年の記念配当5円を含むものですが、連続増配傾向が明確です。とくに2023年以降は業績回復に合わせて増配余地を広げており、長期配当狙いの投資家にとって魅力的な銘柄です。
また、同社の営業キャッシュフローも堅調で、2025年には約10億円を超えています。投資活動ではAI・OCR・クラウド事業への積極的な開発投資が続いており、これが中長期の成長基盤を支えています。財務活動によるキャッシュフローはマイナスですが、これは主に配当と借入金返済によるものであり、健全な財務運営の結果といえます。
従業員数も2021年の336人から2025年には643人に増加。人的リソースを拡充しつつ、教育・研修制度や女性管理職比率(26.4%)などダイバーシティ推進にも力を入れています。月平均残業時間も6.8時間と短く、ESG経営の観点からも持続可能な組織体制を構築しています。
今後の業績
今後の見通しとして、同社は2026年6月期を初年度とする「3か年計画」を策定。
重点テーマは以下の3点です。
- 保険クリニックブランドのさらなる拡大
来店型保険ショップの店舗網を拡充し、顧客満足度を高める。2025年時点で直営74店・FC196店の体制を、さらなるエリア拡大で全国展開を強化。 - ASシリーズのバーティカルSaaS化
保険代理店や金融機関向けに特化した業務支援システムとして「AS platform」「AS FINDER」などを拡充。生成AI技術を活用し、保険業務のナレッジ検索・約款対応・顧客管理などを一元化する方向性を示しています。 - 資本効率と成長の両立
売上高と営業利益の持続的成長を目指しつつ、ROE向上・配当性向維持のバランスを重視する方針です。
2026年6月期の連結業績予想では、売上高112億円(前期比+19.8%)、営業利益8.4億円(同+13.9%)、経常利益8.5億円(同+12.7%)、純利益5.0億円(同+16.4%)を見込んでおり、引き続き二桁成長を計画しています。AIを活用した新プロダクト群「AS FINDER」「brox」などが保険業界のDXを後押しし、安定したサブスクリプション収益を生み出す見込みです。
加えて、国内の保険市場が成熟する中で、同社の“中立的コンサルティング+自社システム”というビジネスモデルは他社にない優位性を持ちます。改正保険業法による代理店管理強化は、むしろシステム導入需要を押し上げる要因となり、アイリックにとって追い風といえます。
一方で、リスク要因としては保険会社の販売方針変更や景気後退による契約率低下、情報管理の信頼性維持などがあり、これらをいかに制御できるかが今後の課題です。
総じて、アイリックコーポレーションは「来店型保険販売」と「保険業界SaaS」を両輪とする成長企業です。安定したキャッシュフローと高配当を維持しつつ、AI技術を軸に事業拡張を進める姿勢は、長期配当を重視する個人投資家やFIRE志向の投資家にとって魅力的な成長株といえるでしょう。
業種平均の比較分析
指標比較表
| 指標名 | アイリックコーポレーション | 保険業平均 | 差異(ポイント) | 評価コメント(要約) |
|---|---|---|---|---|
| 自己資本当期純利益率(ROE) | 11.6% | 13.81% | -2.21 | 成長性は業界平均にやや劣るが安定的水準 |
| 総資産経常利益率 | 12.4%(※) | 1.86% | +10.54 | 資産効率は圧倒的に高い |
| 売上高営業利益率 | ― | ― | ― | ― |
| 自己資本比率 | 64.2% | 9.2% | +55.0 | 業界随一の財務安定性 |
| 配当性向 | 69.0% | 31.16% | +37.84 | 株主還元を極めて重視 |
| 純資産配当率 | 8.0%(推定) | 4.28% | +3.72 | 安定的な高配当モデル |
※総資産経常利益率は「経常利益 ÷ 総資産 × 100」で算出。
2025年6月期経常利益752,723千円/総資産6,051,786千円 ≒ 12.4%
コメント・詳細分析
1.自己資本当期純利益率(ROE)
ROE(Return on Equity)は株主資本に対する当期純利益の割合を示し、企業がどれだけ効率的に自己資本を活用して利益を生み出しているかを表します。
アイリックコーポレーションのROEは11.6%で、保険業平均の13.81%をわずかに下回ります。一般的に10%を超えれば健全・優良水準とされるため、同社のROEは「堅実かつ安定した利益創出力」を有していると評価できます。
ROEが業界平均をやや下回る理由としては、同社が保険販売のみならず、システム・ソリューションなど複数事業を抱える「総合型モデル」であることが挙げられます。つまり短期的な利益追求よりも、中長期的な基盤強化や開発投資に資金を配分しているため、ROEがやや抑えられる構造になっています。
一方で、ROEの推移をみると2023年の0.4%から2024年9.7%、2025年11.6%へと急上昇しており、収益性が大きく改善しています。これは保険クリニックの店舗拡大とAI-OCRなど高付加価値サービスの収益化が寄与しているためです。今後の「AS platform」「AS FINDER」などSaaS事業が本格化すれば、ROEは再び業界平均を上回る可能性があります。
2.総資産経常利益率(ROAに相当)
総資産経常利益率(Return on Assets)は、企業が保有する総資産をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示します。
アイリックコーポレーションは約12.4%と、業種平均の1.86%を大きく上回ります。実に10ポイント以上の差です。
保険会社のROAは、預かり資産や運用資産の規模が大きく利益率が薄くなる傾向がありますが、アイリックは「無借金経営」「資産軽量モデル」を採用しており、資産に対して高い利益を生み出す構造が確立されています。とくにシステム開発やサブスクリプション収入は固定資産をあまり必要とせず、営業利益をそのままキャッシュフローに転化できるため、資産効率が非常に高いのです。
資産の回転効率が良いことは、同社が「攻めのIT企業」として機動的な事業展開を行えている証拠であり、配当余力にもつながります。長期的なFIRE志向の投資家にとっては、安定成長と同時に高いキャッシュ創出力を備える点が魅力です。
3.自己資本比率
自己資本比率は64.2%と、保険業平均の9.2%を大きく上回っています。これは業界屈指の財務健全性を示す数値です。
保険業は一般に巨大な資産運用を行うため自己資本比率が低くなりがちですが、アイリックコーポレーションは「保険代理店+テック企業」という軽資産モデルであり、借入金に頼らない健全な財務構造を維持しています。自己資本比率60%超という水準は、中堅上場企業の中でもトップクラスに位置します。
この堅固な財務体質は、長期的な景気変動や法改正などの外部ショックにも耐えられるリスク耐性を示しており、配当の安定性にも直結します。特に、2025年時点での現金・現金同等物残高は22億円を超えており、配当原資・設備投資・研究開発いずれにも余裕を持つ構造です。
4.配当性向
配当性向は69.0%で、業種平均の31.16%を大幅に上回っています。これは、同社が株主還元を極めて重視していることを意味します。
2025年の1株当たり配当金は30円(うち5円は記念配)であり、過去5年間で12円 → 15円 → 20円 → 30円と、右肩上がりの増配を実現しています。この継続的増配の背景には、安定したキャッシュフローと利益の積み上げがあり、単なる一時的な記念配ではなく「配当を経営の柱」として位置付けている点が評価できます。
また、保険業界の平均配当性向が30%前後と控えめであるのに対し、同社は倍以上の水準を維持しており、長期投資家・FIRE層にとって非常に魅力的な高配当株といえます。配当利回りも概算で3〜4%程度あり、安定したインカムゲインを期待できます。
5.純資産配当率(DOE)
純資産配当率(DOE)は約8.0%(推定)で、業種平均の4.28%を上回っています。DOEは企業が純資産に対してどの程度の配当を出しているかを示す指標であり、安定的な配当政策を測るうえでROEよりも中長期的な視点に適しています。
アイリックのDOEが高い理由は、株主資本を活用しつつも過剰な内部留保を行わず、事業拡大と還元をバランス良く進めている点にあります。とくに2025年の増配は単なる一過性ではなく、今後も高いDOEを維持する姿勢が見て取れます。
このように、同社は「収益性+安全性+還元性」の3拍子が揃っており、配当重視型ポートフォリオの中核銘柄としてふさわしい存在です。
配当方針と今後の展望
配当実績と方針の概要
有価証券報告書によると、2025年6月期の1株当たり配当金は30円で、前年の20円から大幅な増配となりました。内訳は「通常配当25円」と「創業30周年・保険クリニック25周年記念配当5円」です。
この記念配を含む配当性向は69.0%と高く、業界平均(31.16%)を大きく上回っています。
「第30期の1株当たり配当額30円には、創業30周年及び保険クリニックの本格始動から25周年を記念した記念配当5円を含んでおります。」
― 有価証券報告書 第30期
さらに、過去5年間の配当推移をみると、同社が一貫して増配路線を維持していることがわかります。
| 決算期 | 1株当たり配当金 | 当期純利益 | 配当性向 |
|---|---|---|---|
| 2021年6月期 | 12円 | 204,307千円 | 50.2% |
| 2022年6月期 | 12円 | 241,130千円 | 42.6% |
| 2023年6月期 | 15円 | 15,556千円 | 833.3% |
| 2024年6月期 | 20円 | 345,109千円 | 48.0% |
| 2025年6月期 | 30円(記念配5円含む) | 356,042千円 | 69.0% |
2023年に一時的な利益減少で配当性向が急上昇したものの、翌年には利益が急回復し、増配を伴う安定的な還元を継続しています。これにより、「利益連動型+安定配当型」ハイブリッド政策を採用していると考えられます。
財務面から見た配当余力
配当の持続性を評価するうえで重要なのが「財務基盤」と「キャッシュフロー」です。
■ 自己資本比率とキャッシュフロー
2025年6月期の自己資本比率は64.2%と高水準。保険業界平均(9.2%)を圧倒的に上回っており、安定的な配当原資を確保できる構造です。さらに、営業活動によるキャッシュ・フローは約10億円(1,075,471千円)で、前年を上回っています。
投資活動ではAI関連システムやSaaS開発への積極投資を継続しているものの、期末の現金残高は約22億円(2,222,780千円)と十分な水準を維持しています。
このようなキャッシュリッチな体質により、同社は「安定的かつ将来的な増配余地を十分に有する企業」と言えます。
■ ROEとDOEの観点
ROE(自己資本利益率)は11.6%と健全な水準を維持しており、ROE向上とともにDOE(純資産配当率)も8%前後と高めです。これは、内部留保を過剰に積み上げず、資本効率を重視する姿勢を示しています。
つまり、利益成長に連動しつつ、安定的な配当を出す「バランス型還元方針」を持つ企業です。
配当方針の位置付けと経営理念との関係
同社の経営理念である「三者利益の共存(顧客・保険会社・代理店)」は、株主との関係にも拡張して解釈できます。保険事業という規制業種でありながら、透明性の高い経営と株主利益の最大化を志向していることが特徴です。
「お客様本位の業務運営を維持しつつ、保険会社の収益、ブランド価値向上及びコンプライアンスに貢献する。」
― 経営方針より
株主に対しても同様に「共存共栄」の姿勢を貫いており、業績拡大に伴う利益を安定配当と記念配当という形で共有するスタンスです。
今後の配当方針の方向性(予測)
有価証券報告書によれば、2026年6月期を初年度とする3か年中期経営計画を策定しており、「売上高・利益の持続的成長と資本効率の両立」を掲げています。
この計画の中で同社は、「保険クリニックの店舗拡大」「ASシリーズのSaaS化」「生成AIの導入」を重点戦略とし、業績目標として以下を設定しています。
- 売上高:112億円(前期比+19.8%)
- 経常利益:8.5億円(同+12.7%)
- 純利益:5.0億円(同+16.4%)
この見通しから、今後3年間は増収増益トレンドの継続が見込まれます。
したがって、配当政策についても以下のような方向性が予想されます。
■ ① 「安定配当+利益連動」の維持
同社は利益の変動にかかわらず減配を避ける傾向が強く、配当性向を50〜70%程度で推移させる見通しです。2023年のように一時的な業績悪化があっても、内部留保によって配当を維持する姿勢を見せています。
→ 予測:2026年度の年間配当は25〜30円を下限、35円への増配も視野。
■ ② 記念配・特別配の柔軟導入
2025年は記念配当を実施しましたが、これは単発的なものに留まらない可能性があります。将来的に「保険クリニック300店舗達成」や「ASシステム導入企業1000社突破」などの節目で、特別配当が再び実施される余地があります。
こうした“イベント連動型配当”は、株主との長期的信頼関係を構築する有効な手段です。
■ ③ DOE(純資産配当率)の重視傾向
近年、日本企業で注目が高まっているのがDOE経営(配当原資を純資産ベースで考える考え方)です。同社のDOEはすでに約8%と高水準にあり、ROEの安定化とともにDOE連動型の配当政策を継続する可能性が高いです。
これは、長期的な資本政策の中で「毎年一定の配当成長を目指す」スタイルであり、個人投資家にとって最も安心感のある配当形態といえます。
■ ④ 内部留保の使途と株主還元バランス
営業キャッシュフローが堅調な同社にとって、内部留保は「攻めの投資」と「守りの還元」の両方に活用可能です。
AI・OCR・SaaSなど成長領域への開発投資を継続しながら、余剰資金は配当や自社株買いに充てる可能性があります。特にグロース市場上場企業の中では珍しく、安定配当+投資拡大の両立型経営を実現しています。
他社比較による優位性
保険業界の大手(第一生命、T&Dホールディングス、MS&ADなど)は、一般に配当性向30〜40%を目安にしており、ROEも10〜13%程度に留まります。これに対し、アイリックコーポレーションはROE11.6%+配当性向69%+DOE8%という「高還元型成長企業」として異彩を放っています。
中小規模ながらも、自己資本比率64%という財務安全性を維持しており、「高配当でありながら無理のない余力ある還元」を継続できる点が特徴です。
また、安定したストック収入(SaaS・ライセンス)が増えており、今後の利益変動リスクは限定的です。
投資家視点での総合評価
配当方針の実質的特徴を整理すると、以下の3点に集約されます。
- 業績連動型ではなく、キャッシュフロー連動型に近い配当方針
利益変動があっても営業CFが安定しているため、減配リスクが小さい。 - 配当性向60〜70%を維持する株主重視姿勢
一般的な中小成長企業よりも還元比率が高い。 - 記念配・特別配を活用し、株主ロイヤルティを高める戦略
株主との“関係性強化型IR”を重視。
このように、同社は「成長と還元の両立」を中核に据えた経営を展開しており、単なる保険代理店から「配当も出せる安定成長テック企業」へと進化しています。
長期配当投資評価
レーティング評価:
評価コメント
株式会社アイリックコーポレーション(7325)は、長期配当を目的とする投資家にとって「安定性と成長性を両立した優良銘柄」と評価できます。
国内株式全体と比較しても、特に中小型株としては珍しい「高配当+安定業績+増配姿勢」を兼ね備えており、長期保有によるリターンが期待できる銘柄です。以下、その理由を配当利回り・持続性・増配トレンドの3軸から詳しく解説します。
まず配当利回りは2025年6月期の1株配当30円(記念配5円含む)に対し、株価が仮に約870円(期末最低株価水準)とすると利回り約3.4%となります。これはTOPIX平均(約2%前後)を上回り、東証グロース市場の中でも上位水準です。記念配を除いた25円でも約2.9%の実利回りがあり、インカムゲイン狙いの投資家にとって十分魅力的です。
次に配当の持続性ですが、同社の自己資本比率は64.2%と極めて高く、営業キャッシュフローも毎期黒字(2025年約10億円)を維持しています。無借金経営に近い財務体質であり、景気変動や保険業法改正といった外部要因への耐性も強い点が安心材料です。また、配当性向は69%と高いものの、これは一時的な記念配を含んでの数値であり、実質ベースでは50〜55%程度。利益成長と内部留保のバランスを取りながら、「減配しない方針」を貫いてきた実績が評価ポイントです。
そして連続増配傾向に注目すると、過去5年間で12円 → 15円 → 20円 → 30円と一貫して増配しています(2023年を除く)。特に、業績回復と同時に配当も即座に引き上げており、株主還元を「経営方針の柱」として位置づけていることがわかります。日本企業ではまだ少ない“配当成長経営”の実践例として高く評価できます。
一方で、★5つ満点に届かない理由は、まだ配当実績の長期トラックレコード(10年以上の連続増配など)がない点です。大手高配当株(JT、伊藤忠、KDDIなど)と比較すると歴史的安定性ではやや劣ります。ただし、成長性・キャッシュ創出力では上場グロース市場の中で群を抜いており、今後もAI・SaaS事業の利益拡大に伴い、“持続的増配株”としての地位を確立する可能性が高いです。
総合的に見て、アイリックコーポレーションは「中期で年率3〜4%の利回りを得ながら、増配によって実質利回りを拡大できる銘柄」。
日本株全体の中では長期配当投資向けの“隠れた優等生”と評価でき、長期保有・配当再投資を前提とするFIRE志向の投資家にとって非常に魅力的なポジションを持つ企業といえるでしょう。

