Solvvy株式会社【7320】の現状と今後を第17期有価証券報告書から探る

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企業概要

事業内容とリスク

Solvvy株式会社(旧日本リビング保証株式会社)は、「ストックビジネスコンサルティング」を核とした企業です。保証、デジタルマーケティング、システム開発、業務運営、組込型金融といったソリューションを組み合わせ、企業が継続的に収益を生み出す仕組み作りを支援しています。主な事業は以下の4領域に分かれています。

  • HomeworthTech事業:住宅設備や建物そのものの長期保証サービス(例:建物20年保証、地震補償、地盤保証)を提供。新築から中古住宅まで幅広く対応し、アフターサービスを通じて住宅事業者の収益化を支援。
  • ExtendTech事業:住宅以外の分野に展開。再生可能エネルギー機器(太陽光発電や蓄電池)、教育ICT端末、家電製品などに長期保証サービスを提供。拡大市場である再エネ領域や教育分野での需要を取り込んでいます。
  • LifeTech事業:子会社メディアシークが担うIT・DX分野。AIや画像解析、ライフスタイル向けアプリ開発など、企業のデジタル化を推進。
  • FinTech事業:電子マネー「おうちポイント」や、分割払い決済サービスを展開。組込型金融サービスを通じて顧客との長期的な関係性を構築しています。

一方で、事業にはいくつかのリスクが存在します。住宅市況や再エネ需要に左右される市場環境リスク、競合の増加による収益性低下リスク、損害保険会社との提携関係の変化、外部委託先の経営破綻リスク、そして個人情報漏洩やシステム障害といった情報セキュリティリスクです。特に保証サービスは長期的な契約が多いため、将来の修理コスト増加は利益を圧迫する懸念があります。また、人材の確保・育成が追いつかない場合、成長戦略が停滞するリスクも指摘されています。

今までの業績

過去5年間の業績を見てみると、売上高は2021年の約26億円から2025年には約67億円へと拡大しており、成長性の高さがうかがえます。経常利益も増加傾向にあり、2025年6月期には約19億円に達しました。ただし、2025年6月期は純損失約6億円を計上しており、投資負担や一時的なコスト増が利益を圧迫しました。

1株当たり配当額は2021年から10円を維持し、2024年には15円、2025年には記念配当を含め28円まで増配しています。特に配当性向は直近年度では赤字のため算定されていませんが、過去には10%前後と健全な水準で推移していました。株主総利回りはTOPIXを上回り、長期保有者にとっては魅力的なパフォーマンスを見せています。

財務の健全性を見ると、自己資本比率は2021年の5.7%から2025年には16.8%へと改善しており、財務基盤が着実に強化されてきた点は投資家に安心感を与えます。さらに従業員数も増加しており、事業拡大に向けた人材投資が進んでいることが分かります。

今後の業績

今後の業績展望として、Solvvyは以下のポイントを重視しています。

  1. ストックビジネスの強化
    長期保証やサブスク型サービスを軸に、安定的な収益モデルを拡充。住宅市場の新築需要が減少する一方、中古住宅市場や再エネ市場での保証ニーズを取り込み、持続的な成長を狙います。
  2. DXとFinTechの拡大
    IT・DX領域では、AIやアプリ開発の需要増加を背景に、子会社メディアシークの事業が成長ドライバーとなります。さらに分割払い決済サービスなど組込型金融の拡充により、事業者とエンドユーザーの関係性を深める戦略です。
  3. 新規事業開発と海外展開の可能性
    保証サービスは国内だけでなく、再エネや教育ICT分野を通じて海外展開の余地があります。今後は既存事業の強化と並行し、新規事業やグローバル市場への進出も期待されます。
  4. 課題と対応
    一方で、住宅着工数の減少や競合激化といった外部リスクは継続的に存在します。そのため、Solvvyは保証・金融・ITを融合した「SAaaS(Smart Assurance as a Service)」を強化し、他社との差別化を図る方針です。また、内部管理体制の強化や人材戦略の推進を通じ、持続可能な成長基盤の構築を目指しています。

業種平均の比較分析

指標比較表

指標業種平均(その他金融業)Solvvy株式会社差異
自己資本当期純利益率(ROE, %)8.63-(当期純損失のため算定不可)
総資産経常利益率(%)0.886.67(経常利益19.77億円 ÷ 総資産296.2億円)+5.79
売上高営業利益率(%)11.4724.16(営業利益16.20億円 ÷ 売上高67.05億円)+12.69
自己資本比率(%)6.9516.88+9.93
配当性向(%)41.27-(当期純損失のため算定不可)
純資産配当率(%)3.390.61(配当28円 ÷ 1株当たり純資産394.95円)-2.78

コメント・詳細分析

1. 自己資本当期純利益率(ROE)

ROEは株主資本に対してどれだけの利益を生み出したかを示す代表的な指標です。業種平均が8.63%であるのに対し、Solvvyは当期純損失を計上したため算定不能となっています。
これは一時的な赤字が原因であり、長期的な利益創出力を直ちに否定するものではありませんが、配当を重視する投資家にとっては警戒点となります。特にFIREを目指す個人投資家にとっては、ROEが安定的にプラスを維持するかどうかが重要な投資判断材料になります。

2. 総資産経常利益率

業種平均0.88%に対して、Solvvyは6.67%と大幅に上回っています。これは総資産を効率的に活用し、高い利益を生み出せていることを意味します。総資産規模が拡大する中でも経常利益を確保している点は強みです。
ただし、利益率が高い一方で、資産拡大に伴うリスク管理(貸倒・システム障害など)を慎重に行う必要があります。投資家視点では「収益効率性は高いがリスクも比例して高まる」点を押さえることが重要です。

3. 売上高営業利益率

業種平均11.47%に対し、Solvvyは24.16%と倍以上の水準です。これは本業の収益力が非常に高く、競争優位性があることを示しています。住宅保証や再エネ保証など、ニッチで高付加価値なサービスを提供しているため、利益率が高くなっていると考えられます。
この数値は、事業モデルが安定した「ストック型」であることの証明ともいえます。配当狙いの投資家にとっては「本業の稼ぐ力」が健全である点は安心材料です。

4. 自己資本比率

業種平均6.95%に対してSolvvyは16.88%と2倍以上の水準を確保しています。自己資本比率の高さは、財務の安定性を意味し、外部からの借入に頼らず自社資本で事業運営できる強みがあります。
特に金融業はレバレッジを効かせやすい業種ですが、Solvvyは慎重に資本を積み上げており、健全経営を志向していると評価できます。長期的な配当余力の観点からも、投資家に安心感を与える要素です。

5. 配当性向

業種平均41.27%に対して、Solvvyは当期純損失のため配当性向は算出不能です。ただし、実際には記念配当を含む28円の配当を実施しており、赤字でも株主還元を維持する姿勢を見せています。
これは株主重視の姿勢として評価できますが、利益が伴わない配当は持続性に懸念を残します。今後は利益水準が回復すれば、業種平均に近い安定的な配当性向を目指すことが期待されます。

6. 純資産配当率

業種平均3.39%に対してSolvvyは0.61%と大きく下回っています。これは株主資本に対する配当還元水準が低いことを意味します。赤字の中でも配当を維持したものの、純資産の増加スピードに比べると配当の伸びは限定的です。
個人投資家の視点では「今後の増配余地が大きい」とも捉えられます。高ROE・高利益率の年が戻ってくれば、純資産配当率も上昇余地があるため、中長期的な投資妙味があります。

配当方針と今後の展望

配当方針の基本

Solvvy株式会社は、上場以来「株主への安定的かつ継続的な配当」を基本方針としています。内部留保を確保しつつも株主還元を重視する姿勢を示しており、第17期(2025年6月期)においては1株あたり28円(普通配当23円+記念配当5円)の配当を実施しました。なお、配当は従来どおり年1回の期末配当を基本としてきましたが、今後は方針転換が予定されています。

新たな配当方針

2024年11月の株式会社メディアシークとの経営統合を契機に、株主還元のさらなる充実を図る方針を打ち出しています。特に注目すべきは以下の2点です:

  1. 連結配当性向30%を目標
    利益の30%を株主に還元することを目指し、業績回復局面では大幅な増配も期待できる設計。
  2. 累進配当政策の導入
    「業績にかかわらず原則として配当額を維持または増加」させる方針であり、減配リスクを抑える仕組み。株主にとって安心感の高い還元策といえます。

さらに、2026年6月期からは年2回配当(中間配当+期末配当)に移行し、1株あたり20円(中間10円+期末10円、株式分割後)を予定しています。これは配当の安定性と予見可能性を高めるものであり、株主にとって大きなプラス材料です。

配当関連指標の現状

過去の数値を確認すると、Solvvyの配当性向はおおむね10%前後で推移してきましたが、2025年6月期は赤字のため算定不能でした。それでも減配どころか記念配当を加えた28円を実施したことは、株主重視の姿勢を如実に物語っています。純資産配当率は0.61%と低水準でしたが、これは赤字下でも配当を維持した結果であり、利益が黒字化すれば上昇余地は大きいと考えられます。

今後の配当方針の予測

以上を踏まえると、Solvvyの今後の配当戦略は以下のように予測されます。

  1. 累進配当政策に基づく「減配しない姿勢」
    一度設定した水準を維持または増加させる方針であるため、配当の安定性は格段に高まります。
  2. 業績回復とともに増配余地が拡大
    直近は赤字でしたが、本業の収益性(営業利益率24%超)や高い総資産利益率を考慮すると、中期的には黒字復帰が見込まれます。その際には配当性向30%の方針に沿って大幅増配が期待されます。
  3. 年2回配当で株主還元を強化
    中間配当導入により、配当のタイミングが分散され、投資家にとってキャッシュフローの安定化につながります。特にFIREを目指す投資家にとっては、安定的なインカムゲインの源泉となるでしょう。
  4. 長期的な株主価値の向上
    内部留保を成長投資に回しつつ、株主還元を累進的に高める方針は、株価の安定成長と配当の両立を実現する可能性が高いです。

長期配当投資評価

レーティング評価:

評価コメント

Solvvy株式会社を長期投資による配当狙いの観点から評価すると、結論としては「中立的評価(★3つ)」となります。以下にその理由を詳しく解説します。

まずポジティブな点として、同社は累進配当政策を導入し、「減配しない」という株主還元の強いコミットメントを掲げています。さらに、2026年6月期からは年2回配当に移行し、配当の安定性と予見可能性を高める方針を明示しています。これは日本株全体の中でも株主フレンドリーな姿勢であり、FIREを目指す個人投資家にとって安定的なキャッシュフローを期待できる仕組みです。また、営業利益率24%超という高い収益性や、自己資本比率16.8%という健全な財務体質も、長期投資における安心材料となります。

一方で懸念材料もあります。直近期(2025年6月期)は赤字であり、ROEが算出不能となるなど、利益の安定性に不安が残る点です。赤字にもかかわらず記念配当を含む28円を支払った姿勢は評価できますが、他の日本株と比較すると「業績が安定して黒字を積み上げている高配当株(例:銀行株や通信株など)」と比べてリスクは相対的に高いといえます。累進配当政策が導入されたとはいえ、業績が大きく悪化した場合には内部留保を取り崩して配当を維持することになり、持続性への懸念が残ります。

総合すると、Solvvyは「今後の成長と業績回復が伴えば増配余地が大きい企業」であり、長期配当投資のポートフォリオに組み込む価値はありますが、他の安定的な高配当株と比較するとまだ発展途上です。そのため、現時点では中立的な★3つの評価としました。投資家にとっては「将来性を信じてリスクを許容できるなら魅力的」「安定配当だけを狙うなら他の日本株の方が適している」と整理するのが妥当です。