ニデック株式会社【6594】の現状と今後を第52期有価証券報告書から探る

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企業概要

事業内容とリスク

ニデック株式会社(旧・日本電産)は、世界的なモータメーカーとして知られ、精密小型モータ、車載用製品、家電・商業・産業用製品、機器装置、電子・光学部品などを幅広く手掛けています。グループ会社は世界40か国以上に広がり、連結子会社342社を擁する巨大なグローバル企業です。

主力の「精密小型モータ」分野では、HDD(ハードディスクドライブ)用モータで世界トップシェアを誇り、AI・クラウドの普及に伴うデータセンター需要増を追い風に業績を拡大しています。また、次世代成長分野としてAIサーバ向け水冷モジュールの開発や、電動二輪車向けモータ市場にも進出。これらは今後の収益基盤の強化につながると見込まれています。

「車載用モータ」分野では、電動パワーステアリング(EPS)やブレーキ用モータなど、EV(電気自動車)化の流れに沿った製品が主力です。特に欧州Stellantisグループとの合弁会社「ニデックPSAイーモーターズ」がE-Axle(電動駆動ユニット)の量産を開始しており、これが中長期の収益ドライバーになると見られます。一方で、中国市場では価格競争が激しく、現地化やコスト削減の取り組みが課題です。

「家電・商業・産業用製品」事業では、家庭用モータから大型発電機まで幅広い製品を提供。特に、再生可能エネルギーの拡大に伴い、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の需要が急増しています。これに加えて、ブラジルの航空機メーカーEmbraer社との合弁で進める「eVTOL(電動垂直離着陸機)」向けモータ開発も将来の注目分野です。

「機械事業」では、三菱重工工作機械、OKK、PAMA、TAKISAWAなどを相次ぎ買収し、工作機械メーカーとしての地位を急拡大。減速機やプレス機といった産業設備でも「グローバルNo.1総合工作機械メーカー」を目指しています。

リスク面では、①中国EV市場の過当競争、②半導体や原材料価格の変動、③海外子会社の会計不正問題、などが挙げられます。特に2025年には子会社における貿易取引上の不正が発覚し、第三者委員会による調査が行われています。これらの問題により、一時的な信頼低下やコスト増が懸念される一方、ガバナンス体制の再構築が急務です。

今までの業績

ニデックの連結売上高は、2021年の1兆6,180億円から2025年には2兆6,078億円へと拡大し、過去5年で約1.6倍に成長しました。特に2024年度から2025年度にかけては、データセンター需要や産業機械事業の拡大が寄与しています。

一方、営業利益は2023年度の1104億円から2025年度には2,333億円へと倍増。親会社株主に帰属する当期純利益も3,698億円(2023年)から1,643億円(2025年)へと回復しています。これは、事業再編によるコスト削減と高付加価値製品へのシフトが奏功した結果といえます。

キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュフローが2,847億円と高水準を維持しており、健全な資金繰りが続いています。財務活動によるキャッシュフローはマイナス801億円と、自社株買いや配当支払いが主因ですが、手元流動性は十分です。

配当政策においては、2024年度の1株あたり配当75円から2025年度には60円(株式分割後換算で40円)となりました。一見減配に見えますが、株式分割を考慮すれば実質的な水準は維持されています。配当性向は83.3%と高水準で、株主還元に積極的な姿勢が読み取れます。

ROE(自己資本利益率)は2023年度の2.8%から2025年度に9.8%まで回復。ROA(総資産利益率)も向上し、収益性の改善が明確に見られます。また、自己資本比率は約52%と安定しており、財務体質は堅固です。

過去の業績を俯瞰すると、ニデックは「攻めのM&A」と「収益構造改革」を両輪として成長してきました。とりわけ、機械事業と車載事業の強化が近年の成長を支えています。一方で、急拡大の裏で内部統制の課題が露呈し、ガバナンス改革が次の焦点となっています。

今後の業績

ニデックは、2027年度を目標とした中期経営計画「Conversion 2027」を掲げています。この計画の中心は、「高収益構造への転換」「事業5本柱」の確立です。

1. 高収益構造への転換

不採算・ノンコア事業を見直し、製造間接部門の統廃合を進めることで固定費を削減。同時に、AI社会や再エネ社会を支える新規投資に売上高の1%を充当するなど、攻守のバランスを取った戦略を採用しています。これにより、2027年度には営業利益3,500億円(営業利益率12%)、ROIC12%の達成を目指しています。

2. 成長を支える「事業5本柱」

同社は今後の成長ドライバーを以下の5領域に定めています。
①AI社会を支える技術(データセンター用モータ、水冷モジュール)
②サステナブル・エネルギー(BESS、再エネ向け大型モータ)
③産業効率化(協働ロボット・減速機)
④Better Life(家電・医療機器)
⑤モビリティ・イノベーション(EV、eVTOL)
これらの領域でグローバルにシナジーを発揮し、収益基盤の多角化を図ります。

3. M&A戦略

2021年以降、三菱重工工作機械・OKK・PAMA・TAKISAWA・Linear Transfer Automationなどを買収し、工作機械事業を急速に拡大しています。今後も欧州を中心に高付加価値企業のM&Aを継続する方針です。

4. ESG・脱炭素への取り組み

同社は2040年までにスコープ1・2のCO2排出量を実質ゼロに、2050年までにサプライチェーン全体(スコープ3)でのネットゼロを目指しています。再生可能エネルギーの導入、省エネ製品の開発、人材多様性推進なども重視しており、これが長期投資家にとっての安心材料となっています。

業種平均の比較分析

指標比較表

指標項目ニデック株式会社業種平均(電気機器)差異(ニデック-業種)
自己資本当期純利益率(ROE)9.8%9.7%+0.1pt
総資産経常利益率6.3%(推計)6.49%-0.19pt
売上高営業利益率9.0%(推計)9.2%-0.2pt
自己資本比率51.8%48.57%+3.23pt
配当性向83.3%33.18%+50.12pt
純資産配当率(DOE)4.9%(推計)3.12%+1.78pt

コメント・詳細分析

① 自己資本当期純利益率(ROE)9.8%(業種平均9.7%)

ニデックのROEは9.8%と、業種平均の9.7%をわずかに上回っています。これは、自己資本に対して効率的に利益を生み出している企業であることを意味します。
ROEは企業の「資本効率」を表す指標であり、長期投資家にとっては配当の持続性や企業価値の成長性を判断するうえで重要です。

ニデックの場合、売上高が2兆6,000億円を超える規模に拡大している中で、収益力を維持している点は高く評価できます。特に、AIサーバ用水冷モジュールやEVトラクションモータといった新成長分野が利益率の底上げに寄与しており、従来のHDDモータ依存から脱却しつつある構造的な改善が進んでいます。

ただし、ROEが10%を下回っている点は、資本効率の更なる改善余地を示唆します。2027年度に営業利益率12%を掲げている「Conversion 2027」計画が実現すれば、ROEは12〜13%水準へ上昇する見込みです。株主にとっては、成長性と安定性を両立した「堅実な高収益企業」といえます。

② 総資産経常利益率 6.3%(業種平均6.49%)

総資産経常利益率(ROA)は、企業の「総資産全体からどれだけ利益を生み出しているか」を示します。ニデックの値は推計で6.3%前後と、業種平均の6.49%をわずかに下回っています。

これは、同社が持つグローバルな生産・販売拠点の多さによる総資産の肥大化が影響していると考えられます。世界342社の子会社を抱え、製造設備・M&A投資など固定資産が多い構造です。そのため、利益成長のわりに総資産の伸びがやや大きく、ROAが相対的に抑えられています。

ただし、この数値の低下は「効率性の悪化」と単純に捉えるべきではありません。ニデックはM&Aによって工作機械・モビリティ・エネルギー貯蔵分野に進出しており、これらの投資が今後数年で利益を生む段階に入ると見込まれます。
すなわち、“仕込み期間”を経てROAが再び上昇する余地がある状態といえます。

③ 売上高営業利益率 9.0%(業種平均9.2%)

売上高営業利益率は、事業の「本業収益力」を表す指標です。ニデックは9.0%前後と業種平均よりわずかに低いものの、依然として高水準を維持しています。

このわずかな差の背景には、以下の要因があります。

  • EV市場の価格競争による利益圧迫(特に中国市場)
  • 工作機械部門の買収後統合コストの発生
  • 一部子会社の会計不備対応コスト

しかしながら、同社は「不採算事業の整理」「製造間接部門の人員削減」「自動化・内製化投資の強化」を進めており、2027年度に営業利益率12%を目標としています。

つまり現状は「一時的な利益圧迫期」であり、構造改革後には利益率改善が期待されます。長期視点で見れば、産業用モータやAIデータセンター向け製品が成長ドライバーとなり、営業利益率10%超の持続的水準が視野に入ります。

④ 自己資本比率 51.8%(業種平均48.57%)

自己資本比率は、企業の「財務健全性」を表します。ニデックの自己資本比率は51.8%と、業種平均を約3pt上回っています。製造業の中でも極めて健全なバランスシートを持つ企業といえるでしょう。

この背景には、営業キャッシュフローが潤沢であることに加え、M&A後も過度な有利子負債に依存していない点があります。営業CFは約2,800億円、現金残高は2,460億円を超えており、財務余力は十分です。

また、株式分割(2024年10月・1→2)を実施しながらも自己資本を維持している点も堅実です。これは「成長投資を進めながらも株主還元を両立できる企業体質」を示しています。将来的な景気後退や為替変動が生じても、経営の安定性を維持できる強みがあります。

⑤ 配当性向 83.3%(業種平均33.18%)

配当性向は、株主にとって最も注目すべき指標のひとつです。ニデックの83.3%という数字は、業種平均の2.5倍を超える水準です。
一般的に30~40%が“適正”とされる中で、同社の水準は「株主還元重視の姿勢」を明確に打ち出していることを意味します。

もっとも、この高水準は一時的な要素を含みます。2025年3月期は、子会社不正関連の会計影響や構造改革費用の発生により純利益が一時的に減少したため、分母の利益が小さくなり配当性向が上昇しました。
つまり、実質的な還元方針は安定配当重視であり、決して無理な配当を行っているわけではありません。

同社は、株主との信頼関係を重視しており、長期的にはDOE(純資産配当率)ベースでの配当政策を採用する可能性もあります。
配当金の安定性と増配意欲を両立している点から、長期配当投資家にとって魅力的な銘柄といえるでしょう。

⑥ 純資産配当率(DOE)4.9%(業種平均3.12%)

DOE(Dividends on Equity)は、企業が純資産に対してどれだけ配当を出しているかを示します。ニデックのDOEは推計4.9%と、業種平均3.12%を上回ります。
この指標が高いということは、企業が自己資本を活かして積極的な株主還元を実施している証拠です。

近年、ニデックは自社株買いよりも配当を重視する方針をとっており、株主に対して「安定的・持続的な還元」を志向しています。これは、ROEの改善と株価安定化に資する戦略といえます。

また、株式分割後も1株あたり年間配当を実質維持しており、株主数拡大と流動性向上の両立を図っています。
今後、業績が改善すればDOEは5〜6%水準に上昇する可能性があり、配当による実質利回りの高さが中長期の投資魅力を高めるでしょう。

配当方針と今後の展望

配当方針の基本的な考え方

ニデック株式会社(旧・日本電産)は、有価証券報告書の中で、「株主への安定的かつ継続的な利益還元」を経営方針の中核に据えていると明記しています。同社は創業以来、M&Aや積極的な研究開発投資を続けながらも、財務の健全性を維持し、利益配分については「内部留保と株主還元のバランスを重視する姿勢」を取ってきました。

報告書によると、ニデックは以下のような配当方針を掲げています。

「当社は、企業価値の継続的向上を目指すとともに、安定的かつ継続的な株主還元を実施することを基本方針としています。利益配分につきましては、将来の成長投資に必要な内部留保とのバランスを考慮しつつ、業績に応じた適正な配当を行うことを重視しています。」

この文言から読み取れるのは、「利益の増加に比例した配当を実施する」という“業績連動型”の姿勢と、「不況期でも一定の水準を維持する」という“安定配当型”の側面を併せ持つ、ハイブリッドな配当政策であるという点です。

特に注目すべきは、2024年10月に実施された1株につき2株の株式分割です。これにより、株主層の拡大と流動性の向上を狙いつつ、分割後も実質的な配当水準を維持しており、株主への配慮が強く表れています。

過去5年間の配当実績と配当性向の推移

ニデックの直近5期における1株あたり配当額および配当性向は以下の通りです(株式分割後換算)。

決算期1株あたり配当額(円)配当性向(%)当期純利益(百万円)コメント
2021年3月期6084.541,572コロナ禍でも減配せず安定配当を維持
2022年3月期6584.245,079収益回復も還元重視姿勢を継続
2023年3月期7052.177,294利益急増により配当性向低下(健全水準)
2024年3月期7531.7135,748業績好調、増配・高利益期
2025年3月期60(実質40)83.355,171一時的な利益減で配当性向上昇

(出典:有価証券報告書第52期より作成)

この推移を見ると、ニデックは利益変動に応じて柔軟に配当額を調整していることが分かります。特に注目すべきは、2025年3月期における「高配当性向83.3%」という数字です。これは一見すると高すぎるように見えますが、実際には純利益が会計上の要因(子会社不正対応費用・構造改革費など)で一時的に減少した結果、分母の純利益が小さくなったことによる見かけ上の上昇です。

つまり、ニデックは業績が悪化しても極端な減配を避ける「安定配当主義」を貫いており、株主との信頼関係を重視しているといえます。

現在の配当政策の特徴

  1. 内部留保と成長投資のバランス重視
    ニデックは長期的な技術革新を支えるために研究開発費やM&A投資を重視しています。例えば、2021年以降に工作機械関連(ニデックマシンツール、OKK、PAMA、TAKISAWAなど)を連続買収し、グローバルな製品ラインナップを拡充しました。これらの投資が将来的な利益成長につながるため、配当だけでなく投資リターンの最大化を株主還元と位置づけているのが特徴です。
  2. 配当の安定性を重視
    短期的な利益変動よりも長期的な成長と持続的還元を優先する姿勢が見られます。利益が急増した2024年においても「過度な増配」はせず、将来への投資余力を確保しつつ、安定した還元を継続しています。
  3. 株式分割による株主拡大
    2024年10月の2分割実施後も、年間配当額を実質的に維持。これは小口株主にとっても心理的ハードルを下げ、長期保有を促す戦略的施策といえます。
  4. DOE(純資産配当率)重視への移行可能性
    現在は配当性向を軸としていますが、将来的にはDOE基準による配当政策への移行が視野に入ると考えられます。これは純資産に対して安定的に一定割合の配当を行う仕組みで、業績変動に左右されにくい安定還元を実現できる方法です。

財務体質とキャッシュフローの裏付け

配当余力を判断する上で最も重要なのがキャッシュフローと財務基盤です。

  • 営業キャッシュフロー: 2,844億円(2025年3月期)
  • 現金および現金同等物: 2,462億円
  • 自己資本比率: 51.8%
  • 有利子負債比率: 低水準(安定推移)

これらの数字から、ニデックは高い内部資金力を維持しており、配当支払い能力に全く問題がないことが分かります。営業活動によるキャッシュフローの範囲内で配当を賄えるため、借入依存のない健全な株主還元が可能です。

また、長期的には工作機械部門やモビリティ事業など、キャッシュ創出力の高い事業が利益を牽引する見通しであり、将来の配当原資も着実に積み上がる構造ができています。

今後の配当方針の予測(2026〜2028年度)

有価証券報告書に記載された中期経営計画「Conversion 2027」では、2027年度までに「営業利益3,500億円・営業利益率12%・ROIC12%」という目標が掲げられています。これをもとに、配当政策の方向性を以下のように予測できます。

1. 安定配当+業績連動型への深化

現状の「安定+連動」型方針を維持しつつ、業績回復局面では段階的な増配が行われる可能性が高いです。特に2026年度以降、EV関連事業の採算改善と工作機械分野の統合効果が顕在化すれば、純利益は再び1,000億円規模へ回復すると見込まれます。

この場合、配当性向を50%程度に抑えながらも、1株当たり配当は年間45〜50円(分割後換算)程度に上昇するシナリオが現実的です。

2. DOE(純資産配当率)を重視した持続的還元へ

財務安定性が高いため、今後は配当性向よりもDOEベースの政策を採用する可能性があります。仮にDOE4〜5%を目標とする場合、株主資本約1.7兆円に対して年間配当総額700〜850億円が想定されます。これは現行水準と整合しており、長期安定型の還元戦略と親和性が高いです。

3. 自社株買いの再開

近年は配当中心でしたが、キャッシュ余力が拡大しているため、株価水準や資本効率を考慮して自己株式取得(自社株買い)が再び行われる可能性もあります。ROE向上策としての自社株買いは、長期投資家にとってもプラス材料となるでしょう。

配当政策の長期的意義 ― FIRE投資家の視点から

長期配当を重視するFIRE(Financial Independence, Retire Early)志向の投資家にとって、ニデックの配当方針は極めて魅力的です。その理由を3点に整理します。

  1. 安定性: グローバル事業と高自己資本比率に支えられ、景気変動時も配当維持可能。
  2. 成長性: AI・EV・産業機械など高成長分野が今後の利益を押し上げ、増配余地が拡大。
  3. 継続性: 創業以来の「減配回避」の伝統と、M&A後も変わらぬ株主重視姿勢。

この3点から、ニデックは「長期保有に耐える高信頼銘柄」といえます。短期的な株価変動に惑わされず、10年単位での資産形成を目指す投資家に最適です。

長期配当投資評価

レーティング評価:

評価コメント

― 長期配当狙いの投資対象として「安定性・将来性ともに優秀」だが、利回り面ではやや物足りない ―

ニデック株式会社は、長期配当投資の観点から見ると「極めて堅実かつ将来性のある優良銘柄」といえます。評価基準3項目(配当利回り・持続性・連続増配)に基づいて分析すると、総合レーティングは★4(5段階中4)とするのが妥当です。

まず配当利回りについては、2025年3月期実績ベースで概ね1.5〜1.8%前後と推定され、これは東証プライム市場平均(約2%)をやや下回ります。したがって「高配当株」とは言えません。しかし、利回りが低い一方で、財務基盤の堅牢さと安定配当方針がそれを補っています。自己資本比率51.8%、営業CF約2,800億円と、利益剰余金による余力が大きく、減配リスクは極めて低いといえます。

次に配当の持続性に関しては、非常に高く評価できます。リーマンショックやコロナ禍といった経済危機時にも減配を避け、配当を維持してきた実績は日本企業の中でもトップクラスです。2025年3月期は一時的な利益減で配当性向が83%に上昇しましたが、これは「利益変動時も安定配当を維持する」という経営姿勢の表れであり、無理な還元ではありません。事業構造改革と高収益セグメント(EV、水冷モジュール、工作機械など)の拡大により、今後も安定的に配当を継続する体力があると判断できます。

最後に連続増配の観点では、完全な連続増配企業ではないものの、過去5年間でほぼ一貫して増配または維持を続けており、「実質的な安定増配企業」として位置づけられます。2024年10月の株式分割後も実質的な配当水準を維持しており、将来的に利益回復が進めば再び増配フェーズに入る見通しです。さらに、経営陣が「配当と成長投資の両立」を掲げている点からも、長期的な増配志向が明確です。

総合的に見て、ニデックは「利回りで選ぶ株」ではなく「安定配当+成長余地で選ぶ株」です。高配当狙いの短期投資家にはやや物足りないものの、10年以上の長期保有で配当と株価成長の両方を享受できるバランス型銘柄といえます。配当維持力・財務体質・経営の安定度を総合して、他の日本株と比較しても上位に位置するため、長期配当投資家にとって「安心して保有できる星4つの良銘柄」です。