企業概要
事業内容とリスク
手間いらず株式会社(Temairazu, Inc.)は、「世界中のモノやコトとの連携で人々の手間をなくす」という理念のもと、ITを通じた効率化支援を行う企業です。主力事業は「アプリケーションサービス事業」と「インターネットメディア事業」の2つに分かれています。
アプリケーションサービス事業では、ホテルや旅館などの宿泊施設に対して、宿泊予約サイトコントローラー『TEMAIRAZU』シリーズを提供しています。このシステムは、複数の宿泊予約サイトや自社予約エンジンの在庫・料金を一元管理できるクラウドサービスで、宿泊施設の業務効率化や売上拡大に寄与しています。料金体系は、月額固定の利用料と予約数に応じた変動課金で構成されており、安定収益と成長性を兼ね備えたビジネスモデルが特徴です。
もう一つの柱であるインターネットメディア事業では、比較サイト『比較.com』を運営しています。通信サービス、ショッピング、旅行、金融など幅広い分野の情報を整理し、ユーザーの意思決定を支援しています。ただし、検索エンジンアルゴリズムの変動など外部要因によってアクセス数が変動しやすいという課題も抱えています。
リスク面では、以下の点が特に注目されます。
- 宿泊業界依存リスク:主力の『TEMAIRAZU』シリーズは宿泊業界に強く依存しており、自然災害・感染症・地政学リスクなどによって宿泊需要が減退すれば、業績に影響が及ぶ可能性があります。
- 競合の激化:宿泊予約管理市場では国内外のプレイヤーが増加しており、機能面・価格面での競争が激化するリスクがあります。
- システム障害・サイバー攻撃:IT企業として、通信ネットワーク障害や不正アクセス、データ漏えいなどのセキュリティリスクを常に抱えています。冗長化や監視体制の強化は進んでいますが、完全な防御は難しい側面もあります。
- 法規制の変化:「旅館業法」「住宅宿泊事業法」など宿泊関連法令の改正が行われた場合、事業展開に制約を受ける可能性も指摘されています。
一方で、同社は宿泊施設の人手不足という社会課題を解決するサービスとして存在感を高めており、「自動価格設定」「在庫管理」「外部OTA連携」といった自動化技術の進化により、需要は中長期的に拡大傾向にあります。
今までの業績
手間いらずの業績は、ここ数年で堅実な成長を続けています。
売上高は2021年6月期の約16億円から、2025年6月期には約21.8億円へと拡大。経常利益も約11億円から16億円へと増加し、安定した利益体質を維持しています。純利益率・自己資本比率ともに高水準で、無借金経営を継続中です。
2025年6月期の実績は以下の通りです。
- 売上高:2,185百万円(前期比+8.0%)
- 営業利益:1,608百万円(前期比+8.9%)
- 経常利益:1,620百万円(前期比+9.6%)
- 当期純利益:1,067百万円(前期比+9.3%)
- 自己資本比率:93.8%
- ROE(自己資本利益率):16.0%
- 配当金:1株あたり38円(配当性向22.9%)
この数字から分かるように、手間いらずは「利益率の高さ」と「安定的なキャッシュフロー」が際立ちます。営業利益率は実に70%を超え、固定費の低いソフトウェアビジネスならではの収益構造を確立しています。
主力の『TEMAIRAZU』シリーズは、訪日外国人旅行者の増加を背景に予約数が伸び、変動課金部分の収入が増加。2025年6月期のアプリケーションサービス事業の売上は2,174百万円(前期比+8.5%)、セグメント利益は1,772百万円(前期比+9.9%)と好調でした。一方、インターネットメディア事業はアルゴリズム変更の影響を受けて減収となったものの、全体への影響は限定的でした。
また、配当政策についても安定感が光ります。配当金はここ5年間で27円→38円と着実に増配。配当性向は22〜23%前後で推移しており、株主還元と内部留保のバランスを取った堅実な姿勢がうかがえます。営業活動によるキャッシュ・フローも毎期100億円規模で安定しており、財務健全性は非常に高いといえます。
株価収益率(PER)は18.7倍と、成長性の割に割安水準にあります。業界平均と比較しても高収益・高ROEを維持しており、長期配当投資家にとって魅力的な銘柄です。
今後の業績
今後の見通しとして、同社は宿泊業界の構造的な課題である「人手不足」「業務効率化ニーズ」を背景に、アプリケーションサービス事業のさらなる拡大を目指しています。
とくに、2024年にリリースした「手間いらず 自動」は、ホテル独自の料金在庫アルゴリズムを自動化する新サービスで、宿泊施設の収益最大化を支援します。これにより、AIを活用したレベニューマネジメントの普及が一段と進むと見られます。
さらに、海外OTA(Online Travel Agency)との連携強化が進行中で、Klook(香港)、Hopper(カナダ)、Nuitee(アイルランド)など世界的プラットフォームとのシステム接続を開始。これにより、日本の宿泊施設が世界中の旅行客にリーチできる仕組みが整いつつあります。
また、ANAとの共同プロジェクト「Universal MaaS」も注目で、宿泊予約と交通手配を一括管理できる仕組みを提供予定。旅行のユニバーサルデザイン化という新たな社会価値創出にも取り組んでいます。
経営面では、引き続き高い営業利益率(70%台)と無借金経営を維持しつつ、開発・人材・セキュリティ分野への投資を継続する方針です。開発部門への外国籍人材登用も進めており、開発組織の外国籍比率は41%に達しました。これにより、海外市場の知見を生かしたグローバル連携がさらに進むことが期待されます。
リスク要因としては、以下が挙げられます。
- 旅行市場の変動リスク:インバウンド需要が一巡した場合、宿泊予約数が減少する可能性があります。
- 技術進化への対応:AI・自動化技術の発展により競合が増加し、価格競争が激化するリスク。
- 人材確保:少人数精鋭組織であるため、優秀な人材の離脱が経営に与える影響が大きい。
しかしながら、同社の高収益構造・強固な財務体質・独自の市場ポジションを踏まえると、長期的には安定した成長と増配の継続が見込まれます。配当性向が約23%と余力を残しているため、今後も増配余地が十分にある点も魅力です。
業種平均の比較分析
指標比較表
| 指標名 | 手間いらず(第22期) | 業種平均(サービス業) | 差異(ポイント) | コメント概要 |
|---|---|---|---|---|
| 自己資本当期純利益率(ROE) | 16.0% | 7.34% | +8.66 | 高ROE、資本効率に優れる |
| 総資産経常利益率 | 22.46% | 0.89% | +21.57 | 業界を圧倒する収益力 |
| 売上高営業利益率 | 73.6% | 5.75% | +67.85 | 超高利益率モデル |
| 自己資本比率 | 93.8% | 6.68% | +87.12 | 圧倒的な財務健全性 |
| 配当性向 | 22.9% | 41.33% | −18.43 | 成長余力を残した堅実な配当政策 |
| 純資産配当率 | 3.67% | 2.37% | +1.30 | 高ROE型企業にふさわしい水準 |
コメント・詳細分析
① 自己資本当期純利益率(ROE) ― 高い資本効率で株主価値を創出
ROE(Return on Equity)は、株主から預かった自己資本をどれだけ効率的に利益へ転換しているかを示す指標です。手間いらずのROEは16.0%と、業界平均の7.34%を8.66ポイント上回っています。
この水準は、上場サービス業の中でも上位10%に入るほどの高さであり、同社が限られた資本で効率的に利益を上げていることを示します。
特に注目すべきは、同社が無借金経営である点です。一般的に、ROEを高めるにはレバレッジ(借入)を利用して自己資本を圧縮する戦略もありますが、手間いらずの場合は実質的に自己資本のみでこのROEを達成しています。つまり、財務リスクを最小限に抑えながら高い収益効率を実現しているということです。
この構造は、配当金による長期的なリターンを狙う投資家にとって非常に魅力的です。安定した利益体質のうえに、自己資本を過度に削らない慎重な経営姿勢が加わっており、「攻守両面に強いROE」と評価できます。
② 総資産経常利益率 ― 圧倒的な収益力を持つ軽資産モデル
総資産経常利益率(Return on Total Assets)は、企業が保有する資産をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示します。手間いらずの総資産経常利益率は約22.46%(1,620百万円 ÷ 総資産7,218百万円)で、業界平均0.89%を21.57ポイントも上回ります。
この差はまさに「圧倒的な軽資産ビジネスモデル」の証左です。宿泊予約システムや比較サイトといったソフトウェア中心の事業構造は、在庫や設備をほとんど必要としないため、総資産が少なく済みます。その結果、資産1単位あたりが生み出す利益率が非常に高くなるのです。
たとえば、製造業のように固定資産への投資が重い業種では、同様の利益を上げるために膨大な資産を必要とします。一方、手間いらずは「クラウドと契約収益」を軸に安定的な収益を生み出すため、資産の回転効率が非常に高い。これにより、資産を膨張させずとも利益を拡大できるという、スケーラブルで持続的な経営が可能になっています。
③ 売上高営業利益率 ― サービス業とは思えない驚異の70%超
売上高営業利益率(Operating Margin)は、企業がどれほど効率的に本業から利益を上げているかを示す指標です。手間いらずの営業利益率は73.6%と、業界平均の5.75%を67.85ポイントも上回る圧倒的な水準を誇ります。
これは一般的なサービス業の水準をはるかに凌駕しています。たとえば同業界でも上位企業で20%台が多い中、70%を超える利益率はほぼSaaS企業としての理想形に近いといえます。固定費が小さく、顧客が長期契約を維持する「高リテンションモデル」によって、売上の増加がほぼそのまま利益に直結する構造です。
加えて、宿泊施設側の業務効率化・自動化需要は構造的な追い風であり、同社のソリューションが不可欠な存在となりつつあります。したがって、今後も高い利益率を維持する可能性が高く、「安定配当を支える源泉」となるでしょう。
④ 自己資本比率 ― 安全性において他社の追随を許さない
自己資本比率は、企業の財務安全性を示す代表的な指標です。手間いらずの自己資本比率は93.8%と、業界平均6.68%を87.12ポイント上回ります。これは異次元の高さです。
一般的に40%以上あれば健全、70%を超えれば極めて安定的とされますが、同社はほぼ「純資産企業」と言っても過言ではありません。借入金がなく、キャッシュリッチな状態を維持しており、短期的な市場変動や金利上昇にも極めて強い耐性を持っています。
また、同社は近年も積極的に自己株式の取得(約6.3億円)を実施しており、財務の健全性を保ちながら株主還元にも踏み出しています。この高自己資本比率は、「倒産リスクがほぼ皆無」と言える水準であり、長期保有型の配当投資において理想的な基盤といえます。
⑤ 配当性向 ― バランスの取れた還元姿勢と成長余力
配当性向(Dividend Payout Ratio)は、利益のうちどれだけを株主に還元しているかを示します。手間いらずの配当性向は22.9%で、業界平均41.33%を18.43ポイント下回っています。
一見すると低めですが、これは「将来成長に向けた内部留保を優先している堅実な姿勢」の表れです。
同社は、配当性向を一定範囲で安定維持しながら、実際の配当金額を毎年増配しています。過去5年間で27円→38円へと約40%増配しており、利益成長と連動した自然な配当拡大が続いています。
これは、景気変動による業績ブレが少ないSaaS型事業の強みでもあり、「減配リスクの低い安定配当銘柄」として高く評価できます。
今後も売上・利益の拡大余地があるため、配当性向を大きく上げずとも実質的な配当金は増え続けると予想されます。したがって、FIRE志向の投資家にとって、配当成長と元本安定の両立が見込める希少な企業です。
⑥ 純資産配当率 ― 高ROE型企業の象徴的な還元水準
純資産配当率(Dividend on Net Assets)は、株主が保有する純資産に対してどれほどの配当が支払われているかを示します。手間いらずは3.67%と、業界平均の2.37%を1.30ポイント上回る水準です。
これは、自己資本比率が高いにもかかわらず、しっかりと配当を出していることを意味します。
多くの高自己資本企業は、内部留保が積み上がる一方で配当率が低下する傾向がありますが、手間いらずはROE16%という高収益を背景に、純資産に対しても実質的に厚い還元を実現しています。
また、自己株式取得によって1株あたり純資産が引き上げられており、株主価値の増大と還元の両立を図っている点も注目です。
このような構造は、株価の長期安定化にもつながります。株価上昇による含み益と安定的な配当収入の双方を得られるため、「長期投資家が安心して保有できる企業」といえるでしょう。
配当方針と今後の展望
1. 配当方針の概要 ― 株主還元と内部留保のバランスを重視
手間いらずの有価証券報告書によると、同社の配当方針は以下のように明記されています。
「株主の皆様への利益還元を経営の重要課題の一つと位置付け、安定的かつ継続的な配当を基本としつつ、将来の事業展開・設備投資・人材育成等に必要な内部留保とのバランスを考慮して実施する。」
つまり、同社の配当戦略は「安定配当+成長投資の両立」を基軸に据えています。
毎期の業績が安定しているからといって過度に配当性向を引き上げるのではなく、次の成長フェーズに備えて適切な内部留保を維持することを重視しているのです。
この方針は、典型的なキャッシュリッチ企業型の配当政策です。高利益率・無借金経営・安定収益を背景に、過剰な配当を避けつつも、毎年の増配によって株主還元を積み上げていく姿勢が見られます。
2. 配当関連指標 ― 安定成長を裏付けるデータ
第22期(2025年6月期)の有価証券報告書では、以下のような配当関連指標が開示されています。
| 指標名 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1株当たり配当金(円) | 27.00 | 27.50 | 30.50 | 34.00 | 38.00 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 117.06 | 120.78 | 134.86 | 150.69 | 165.73 |
| 配当性向(%) | 23.06 | 22.80 | 22.62 | 22.56 | 22.93 |
| 自己資本利益率(ROE, %) | 18.1 | 16.4 | 16.1 | 15.8 | 16.0 |
| 自己資本比率(%) | 93.4 | 94.6 | 93.6 | 94.0 | 93.8 |
これらの数値から、手間いらずの配当政策には以下の3つの特徴が見て取れます。
(1)安定的な増配を継続
直近5年間で配当金は27円 → 38円(約1.4倍)へと増加しています。
これは業績の伸びに連動した自然な増配であり、景気変動や短期的な利益変動に左右されない強固な収益構造を示しています。
(2)配当性向は一貫して約23%前後
毎年の配当性向が22〜23%の範囲で安定しており、これは同社が「内部留保を確保しながらも、一定割合を株主に還元する」ことを重視していることを示します。
この比率は、成長投資を継続しつつも株主還元を怠らない、中庸でバランスの取れた水準です。
(3)ROE16%・自己資本比率93%という稀有な財務体質
高ROEと高自己資本比率を同時に維持している企業は稀です。
一般に、ROEを高めるには自己資本を減らす(=借入でレバレッジをかける)必要がありますが、手間いらずは完全無借金経営でこれを達成しています。
このため、利益剰余金が積み上がりやすく、将来的には配当原資が自然と拡大していく構造となっています。
3. 現在の配当政策の評価 ― 「増配を続ける守りの配当モデル」
手間いらずの配当政策は、いわゆる「高配当株」ではなく、「安定増配型の成長企業」という位置づけです。
単年の配当利回りは2%前後と突出して高いわけではありませんが、減配リスクが極めて低いことが最大の魅力です。
背景にあるのは、同社の強固なキャッシュ・フロー基盤です。
営業活動によるキャッシュ・フローは毎期10億円規模を維持し、現金及び現金同等物は6,588百万円(約65億円)に達しています。負債ゼロでこれだけの現金を保有していることから、仮に業績が一時的に落ち込んでも、配当維持には十分な余力があります。
加えて、配当金支払い+自己株式取得(約6.3億円)を同時に実施しており、キャッシュリッチ企業としての還元力の高さを示しています。
つまり、手間いらずは「配当での直接還元」と「自己株買いによる間接還元」を両立させる、総還元志向型企業なのです。
4. 今後の配当方針の予測 ― 成長と還元の両輪による安定拡大へ
手間いらずの今後の配当戦略を展望するうえで、以下の3つの要素がカギを握ります。
(1)業績成長の持続性
宿泊予約システム『TEMAIRAZU』シリーズの契約施設数は堅調に拡大しており、変動課金収入(予約件数に応じた収益)が増加傾向です。
インバウンド需要の回復や、ホテル業界の人手不足による自動化需要の高まりも追い風となっています。
2025年度の営業利益率は73.6%と、ほぼSaaS企業の理想形に近い構造です。
このため、売上成長がそのまま利益成長に直結しやすく、配当原資の拡大もほぼ確実視できます。
中期的には、1株配当45〜50円台への増配が十分に視野に入ります。
(2)配当性向の上昇余地
現在の配当性向は約23%と控えめであり、成長投資を優先している段階です。
しかし、現金水準の高さや、既に構築済みのシステム基盤を踏まえると、開発費・設備投資は今後一定水準で安定化する見込みです。
したがって、次のフェーズでは「内部留保の使途」として配当性向を25〜30%程度に引き上げる可能性があります。
仮に配当性向を30%まで引き上げた場合、現在の純利益(約10.6億円)を前提にすれば、年間配当は約49円まで拡大します。
これは現行比約30%の増配に相当し、長期投資家にとって非常に魅力的なリターンとなります。
(3)自己株式取得による総還元強化
2025年には約6.3億円の自己株買いを実施しており、これも株主還元方針の一環です。
自己株買いは一時的な株価下支え効果にとどまらず、発行済株式数を減らすことで1株当たり利益(EPS)の上昇をもたらします。
結果として、同じ配当性向でも実質的な1株配当金が増加しやすくなるため、継続的な増配余地を生む仕組みとなっています。
5. 配当政策の将来像 ― 「緩やかに上がり続ける配当曲線」
以上を踏まえると、手間いらずの今後の配当政策は以下のような姿が予測されます。
| 予測年度 | 1株当たり配当金(円) | 配当性向(%) | コメント |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期(実績) | 38円 | 22.9% | 安定配当・自己株買い併用 |
| 2026年6月期(予測) | 40〜42円 | 約24% | 連続増配継続フェーズ |
| 2027年6月期(予測) | 45円前後 | 約25% | 緩やかな還元率上昇 |
| 2028年以降(中期) | 50円台 | 27〜30% | 成長と還元の均衡到達 |
このように、手間いらずの配当は「急激には上げず、確実に積み上げる」戦略が続くとみられます。
業績の変動が少ないため、将来的にも減配リスクは非常に低く、長期配当成長株(Dividend Grower)としての位置づけが強化されるでしょう。
6. 投資家への示唆 ― FIRE志向の投資家に最適な「配当複利モデル」
手間いらずの配当方針は、FIRE(経済的自立・早期リタイア)を目指す投資家にとって理想的な構造を持ちます。
理由は以下の3点です。
- 高ROE × 高利益率 × 安定キャッシュフローという強固な利益基盤
- 配当性向に余力を残す堅実設計(今後の増配が見込める)
- 自己株買いによる間接的な株主還元(長期的な1株価値の上昇)
FIREを志向する投資家は、単に配当利回りの高い銘柄ではなく、「時間とともに配当が増えていく企業」を選ぶことが重要です。
その点、手間いらずは業界の中でも極めて安定的に利益を伸ばし、配当を毎年積み上げている希少な企業です。
長期配当投資評価
レーティング評価:
評価コメント
手間いらず株式会社は、日本株全体の中でも「長期配当投資に非常に適した堅実企業」と評価できます。
配当利回り自体は突出して高いわけではないものの、配当の持続性と連続増配力において極めて高い安定性を誇ります。
手間いらずの直近の配当利回りはおおよそ2%前後(株価3,900円前後・年間配当38円基準)と、いわゆる「高配当株」には分類されません。日本市場では配当利回り3〜4%台の銘柄が多く存在するため、短期的なインカムゲイン目的の投資対象としては見劣りします。
しかし、本質的にこの企業は「高利回り狙い」ではなく、「安定配当と継続増配による複利的リターン」を狙う長期型の投資先です。過去5年間で配当金は27円から38円へと約40%増加しており、しかも減配は一度もありません。業績に対しても、配当性向が常に22〜23%に維持されており、無理のない範囲で増配を続けている点は極めて評価が高いです。
加えて、営業利益率70%超・自己資本比率93%・無借金経営という極めて堅牢な財務体質が、配当の持続性を裏付けています。国内企業の中でもここまで高い利益率と安全性を兼ね備えた例は少なく、景気後退局面や為替変動があっても減配リスクは非常に低いと考えられます。
一方で、自己資本が潤沢すぎるため、配当性向の引き上げ余地がありながら現状はやや控えめに留まっている点が「星5つに届かない」理由です。今後、配当性向が25〜30%へ引き上げられれば、1株配当は50円台も見えてきますが、現時点では保守的な経営姿勢が続いています。
また、自己株式取得(約6億円規模)を積極的に行っており、配当だけでなく総還元性向で見れば30%近くに達する年もあります。株価の下支え効果もあるため、トータルリターンは実際の利回り以上に高いと評価できます。
総じて、手間いらずは「配当利回りは中庸、だが配当の信頼性と成長力は一級」という位置づけです。
他の高配当銘柄が景気変動で減配する中でも、同社は安定して増配を続ける可能性が高く、FIRE・長期投資家にとって“10年持って報われる企業”といえます。したがって、星5に限りなく近い★★★★☆(星4つ)の評価としました。

