株式会社Birdman【7063】の現状と今後を第13期有価証券報告書から探る

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企業概要

事業内容とリスク

株式会社Birdmanは、「夢を応援する社会をつくる」という理念のもと、マーケティングとエンターテインメントを融合したユニークな事業を展開しています。主力となるのは「マーケティング・トランスフォーメーション事業(MX事業)」と「エンターテインメント・トランスフォーメーション事業(EX事業)」の2本柱です。

MX事業では、企業のブランド価値や商品・サービスの魅力を高めるため、広告やPR、デジタル戦略、メタバース型プラットフォームなどを駆使した総合的なマーケティング支援を行っています。従来の広告代理業の枠を超え、戦略立案から実行までをワンストップで支援する点が特徴です。また、コンサルティング、PRイベント、クリエイティブ制作などを内製化しているため、スピードとコストメリットの両立が可能です。

一方、EX事業では、アーティストのマネジメントやコンサートの企画・制作、デジタルコンテンツの配信を通じて、新しいエンタメ体験を創出しています。これにより、ファンとの関係性を深め、リアルとデジタルが融合する次世代型のエンターテインメントを推進しています。ライブ市場の拡大(2024年には6,000億円超)を背景に、アーティスト支援とデジタル展開を強化しています。

ただし、同社の事業には複数のリスクが存在します。まず、広告・PR予算は景気動向に左右されやすく、景気後退時には企業の広告支出が減少する可能性があります。また、大型案件や特定取引先への依存度が高い点もリスク要因です。さらに、EX事業ではコンサートやイベントの中止・延期による売上変動が生じやすく、計画的な投資回収が難しいケースもあります。これらに加えて、知的財産権侵害、情報漏えい、人材流出などの内部リスクも指摘されています。

同社はこれらのリスクを抑えるため、内部統制の強化や契約管理の徹底、人材教育の充実を進めていますが、今後も不安定な業績環境が続くことが想定されます。

今までの業績

過去5年間の推移を見ると、Birdmanの業績は激しい変動を伴っています。売上高は2023年6月期に約44億円を計上したものの、2024年には約20億円、2025年にはわずか3億1,900万円と急減しています。経常損失も2024年に約20億円、2025年には約6億8,000万円を計上し、継続的な赤字経営が続いています。

背景には、前期の多額の損失による資金繰り悪化と、それに伴う受注減少があります。特に2025年6月期は、新株予約権の行使遅延により資金調達が滞り、MX事業で予定していた大型案件の獲得が困難となりました。その結果、主力であるMX事業の売上は前年比で約74%減少しました。

また、EX事業についても、前期の大幅な赤字を踏まえてリスクコントロールを強化した結果、投資を抑制したため売上規模が縮小しました。アーティストとの契約やイベント企画を慎重に見直したことで損失は縮小したものの、依然として収益基盤は脆弱な状態です。

財務面では、2024年度に債務超過となり、上場維持基準を満たさなくなる危機に直面しました。これに対し、第三者割当による新株予約権の発行を実施し、2025年6月期末には純資産が約2億5,500万円に回復しています。ただし、営業キャッシュフローはマイナスを継続しており、資金繰りには引き続き課題が残ります。

従業員数も2023年の52名から、2025年にはわずか11名まで減少しました。これは新規採用の抑制と事業縮小による構造改革の影響です。平均年収は約679万円とクリエイティブ業界としては標準水準ですが、組織体制の縮小による負担増加も懸念されます。

このように、過去数年間は急速な事業縮小と財務再建の局面にあり、依然として成長軌道への回復は道半ばといえます。

今後の業績

今後の展望として、Birdmanは「MX事業のデジタルシフト」と「EX事業の再構築」を軸に再成長を目指しています。

MX事業では、従来の広告支援に加えて、DX・Web3領域への展開を進め、企業のデジタルマーケティング支援を拡大します。AIを活用した顧客データ分析やメタバース型PR施策など、新しいソリューションの提案力を高め、利益率の改善を図る方針です。また、エンタメ要素を組み込んだ企業ブランディングを強化し、クライアントの新規獲得を目指します。

EX事業については、ライブやグッズ販売、ファンクラブ運営などを通じた収益基盤の再構築を進めています。特にアーティストのデジタルファンビジネスを中心に据え、SNSやストリーミングを活用した新たな収益モデルの確立を目指しています。今後は国内外のアーティストとのアライアンス強化を進め、リスクを抑えながらスケールを狙う方針です。

一方で、財務の健全化も喫緊の課題です。2025年時点では「継続企業の前提に重要な疑義」が付されており、監査法人からも意見不表明の報告を受けています。経営陣の刷新により新体制での再建を進めていますが、抜本的な事業改革と追加資金調達が不可欠な状況です。

中長期的には、広告市場・ライブ市場ともに拡大傾向にあるため、同社が持つクリエイティブ力とデジタル技術を活かせば再成長の余地は大きいと考えられます。特に、広告・エンタメの融合領域は高い市場ポテンシャルを持ち、収益構造を安定化できれば、再び黒字転換も現実的です。

投資家目線では、現状の株価は低迷しているものの、今後の再建進展とデジタルマーケティング・エンタメ分野の成長性次第では、中長期的なリターンが期待できる局面といえます。ただし、資金繰りや継続企業の前提に関するリスクが依然高いため、短期的な値動きには注意が必要です。

業種平均の比較分析

指標比較表

指標Birdman(2025年6月期)業種平均(サービス業)差異(Birdman-業種平均)
自己資本当期純利益率(ROE, %)―(赤字のため算出不可)7.34―(著しく下回る)
総資産経常利益率(%)-36.3(概算)0.89-37.19
売上高営業利益率(%)-175.8(営業損失561,214千円/売上319,062千円)5.75-181.55
自己資本比率(%)10.76.68+4.02
配当性向(%)0(無配)41.33-41.33
純資産配当率(%)02.37-2.37

コメント・詳細分析

① 自己資本当期純利益率(ROE)

ROE(Return on Equity)は、株主が投じた自己資本に対してどれだけの利益を上げたかを示す代表的な指標です。Birdmanの場合、当期純損失が約7億1,500万円に達しており、ROEはマイナスで算出不能です。一方、サービス業全体の平均ROEは7.34%と、安定した利益水準を示しています。

この差異は極めて大きく、Birdmanが現時点で「資本効率の著しい悪化状態」にあることを意味します。ROEの低下は、株主資本を活用して利益を生み出す経営効率が著しく低い、あるいは損失を出していることを示すものです。赤字企業では当然マイナスになるため単純比較はできませんが、同業他社が資本を有効活用して利益を上げているのに対し、Birdmanは資本維持すら困難な状況といえます。

根本的な原因は、売上の急減と利益構造の悪化にあります。2024年期に続き、2025年期も大幅な経常損失を計上しており、資金調達(新株予約権の行使)によりかろうじて純資産を維持しています。つまり、ROEの低下は単なる収益性の問題ではなく、継続企業の前提に関わる「資本毀損のリスク」を含んでいる点が重要です。

② 総資産経常利益率(ROA)

ROA(Return on Assets)は、企業が保有する総資産をどれだけ効率的に利益に変えているかを示します。Birdmanの経常損失は約6億8,000万円、総資産は約21億円であり、ROAは-36%前後と極めて低い水準です。業種平均の0.89%と比べると、約37ポイント下回っており、資産の収益性が著しく悪化しています。

この低下の背景には、売上の急減(前年比▲85%)と事業構造の見直しがあります。特にMX事業(マーケティング支援)は大幅な人員削減の影響で受注件数が減少し、EX事業(エンターテインメント関連)もリスク回避のため新規投資を抑制した結果、固定費の負担に耐えきれなくなりました。

ROAがここまで低い状態は、企業の「稼ぐ力」がほぼ失われていることを意味します。資産を活かして利益を生むどころか、資産維持コストが負担となっている状態です。資産の中でも現金比率が高い(期末現金1.7億円)点は一時的な救済策といえますが、これは資金調達による増資効果であり、実質的な事業利益ではありません。

③ 売上高営業利益率

Birdmanの2025年6月期における売上高は3億1,900万円、営業損失は5億6,100万円であり、営業利益率は約-176%と極端に低い値を示します。これは、売上1円を得るために約1.76円の損失を出している計算です。一方、サービス業全体の平均営業利益率は5.75%であり、その差は実に181ポイントに及びます。

この異常値は、収益構造が大幅に崩壊していることを如実に示しています。特にMX事業では、テレビCMやデジタルキャンペーンなど高コスト案件の減少、そしてEX事業では大型ライブイベントの休止・縮小が響きました。加えて、固定費(人件費・制作コスト)の削減が追いつかず、売上減少に対して費用が先行する悪循環が続いています。

今後の改善には、①高収益案件の獲得、②制作外注の効率化、③デジタル領域の利益率向上(例:AI・Web3活用マーケティング)などが不可欠です。短期的にはコスト構造改革、長期的には「少数精鋭・高付加価値案件」への転換が鍵となります。

④ 自己資本比率

自己資本比率は10.7%であり、業種平均6.68%を約4ポイント上回っています。一見すると健全に見えますが、この数字には注意が必要です。Birdmanは2024年度に債務超過に陥っており、2025年度は新株予約権の行使による資金調達で純資産を一時的に回復させた結果です。したがって、実質的には「資本増強による見かけ上の改善」であり、事業の収益性によって維持された自己資本とは言えません。

他方で、同業他社の多くが内部留保によって安定的に資本を積み上げている点を考慮すると、Birdmanの資本構造は依然として脆弱です。今後、再び損失を計上すれば、再度債務超過に陥るリスクが高いと考えられます。

とはいえ、業種平均を上回るという点は、少なくとも「資金調達余地が残されている」ことを意味します。資本市場との関係を維持しつつ、増資や新株発行による調達が可能であれば、短期的な資金繰り破綻は回避できる見込みです。だが、中長期的には財務安定のための「黒字体質化」が必須です。

⑤ 配当性向

Birdmanは第13期において配当を実施していません。したがって、配当性向は0%です。業種平均の配当性向は41.33%であり、収益を安定的に還元している企業群とは対照的です。

同社が無配を継続している理由は明確で、累積損失が多く、配当可能利益が存在しないためです。企業としてはまず債務超過の解消と利益体質への転換が最優先事項であり、現時点での株主還元は現実的ではありません。

一方で、Birdmanは「夢を応援する社会をつくる」という理念のもと、クリエイティブ産業を軸とした新しい市場創出を目指しており、将来的に黒字転換が実現すれば、利益の一定割合を株主に還元する姿勢を打ち出す可能性があります。しかし、現段階では内部留保を優先する必要があるため、配当再開は早くても2~3期先になると予測されます。

⑥ 純資産配当率(DOE)

DOE(Dividend on Equity)は、自己資本に対する配当の割合を示す指標です。Birdmanは無配であるため0%、業種平均は2.37%です。DOEは配当の安定性を測る指標であり、収益変動に左右されにくい観点から中長期投資家が重視する値ですが、Birdmanの現状ではこの安定性がまったく存在しません。

ただし、DOEの低さ自体は、成長投資を優先するベンチャー企業においては一概にマイナスではありません。問題は「投資が将来のリターンに結びつくかどうか」です。現状のBirdmanは、投資のリターンよりも損失の方が大きく、資本効率が低い状態です。そのため、DOEを上げるためには、まず収益性の改善を前提にした「持続可能な利益構造」を確立する必要があります。

配当方針と今後の展望

現状の配当状況

2025年6月期(第13期)のBirdmanは、1株当たり配当額0円(無配)を継続しています。
有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」によれば、以下の通り、過去5期連続で配当は実施されていません。

決算期売上高(千円)当期純利益(千円)1株当たり純利益(円)1株当たり配当額(円)配当性向(%)
第9期(2021年6月)1,757,903△49,620△9.91
第10期(2022年6月)3,367,985187,08136.69
第11期(2023年6月)3,058,5021,3130.25
第12期(2024年6月)2,085,456△3,042,651△579.12
第13期(2025年6月)319,062△715,869△69.8100

つまり、同社は上場以来、一度も配当を実施していないことになります。
配当性向もゼロであり、利益の分配よりも「事業再建」と「資本維持」を優先している状況です。

配当方針の記載内容(有価証券報告書より)

有価証券報告書によると、Birdmanの配当方針は次のように記載されています(要約)。

「当社は、株主への利益還元を経営上の重要課題の一つと認識しておりますが、現状の業績および財務状況を踏まえ、内部留保の充実を優先いたします。今後、安定的かつ持続的な利益を計上できる体制が整った段階で、業績・財務状況等を総合的に勘案し、株主への利益還元を検討してまいります。」

この一文に同社の立場が明確に表れています。
つまり、Birdmanは「配当を否定しているわけではない」が、「当面は内部留保と財務再建を優先する」という方針です。

財務状況からみる配当余力

Birdmanの配当停止の背景には、深刻な業績悪化と債務超過の解消過程があります。

2024年には債務超過(純資産マイナス1.44億円)に陥りましたが、2025年は新株予約権の発行・行使による資金調達で純資産2.5億円まで回復しました。しかし、これは「営業利益で得た内部留保」ではなく、「外部資金による資本増強」です。

その一方で、営業キャッシュフローはマイナス2.96億円、経常損失は6.8億円に達しており、本業でのキャッシュ創出力は極めて弱い状態にあります。
このため、現時点で配当を出す余力は事実上ゼロと判断できます。

また、会計監査人(監査法人アリア)からは「継続企業の前提に重要な疑義がある」と指摘されており、経営体制の刷新が行われたばかりです。このような状況下で配当を実施することは、上場維持基準の観点からも現実的ではありません。

過去の利益と株主還元姿勢

Birdmanの上場(旧・エードット時代を含む)は2019年。
上場初期はブランディング支援・広告制作を中心に黒字転換を果たしましたが、2021年以降は事業統合やEX事業への投資により赤字化が続いています。
配当を実施するタイミングは2022年(第10期)の黒字期が唯一のチャンスでしたが、その時も配当は見送られています。

このことから、同社の株主還元姿勢は「慎重かつ保守的」であることがわかります。
投資資金を内部成長に充てるスタンスを重視しており、安定黒字化するまでは還元を封印していると考えられます。

今後の配当方針の見通し

① 短期的見通し(今後1〜2期)

短期的には、配当再開の可能性は極めて低いと考えられます。
理由は以下の通りです。

  • 営業損失・経常損失が継続しており、利益剰余金がマイナス。
  • 継続企業の前提に関する監査意見不表明。
  • 資金調達による資本補強が主な財務改善手段であり、事業利益が伴っていない。
  • 新経営陣のもとで再建フェーズが始まったばかり。

現状では、手元資金の確保が最優先であり、配当は「将来の再建完了後」の議題となるでしょう。
株主への還元よりも、債務超過リスクの完全払拭と事業黒字化の達成が先決です。

② 中期的見通し(3〜5年)

Birdmanが掲げる中期経営方針では、MX事業のデジタル領域(Web3・AI活用マーケティング)への進出と、EX事業の収益化(ライブ・デジタルコンテンツ・マーチャンダイジングの拡大)を進める計画があります。
これが成功すれば、2027〜2028年頃に黒字転換が実現し、配当再開の可能性が見えてきます。

中期的に期待できる配当政策のパターンは以下の通りです。

フェーズ利益水準配当方針の想定備考
〜2026年赤字継続無配継続財務安定を最優先
2027〜2028年単年度黒字化記念的な1円配当株主へのメッセージ性重視
2029年以降安定黒字配当性向20〜30%へ段階的引き上げ安定還元フェーズに移行

特に、黒字転換初年度に「象徴的な配当」を実施する可能性があります。これは株主信頼の回復を目的としたシグナル配当(シグナリング理論)に基づく行動であり、上場企業としての信用回復に有効です。

③ 長期的見通し(5年以降)

長期的には、BirdmanがEX事業(エンタメ領域)で安定収益を確立できれば、配当性向30%前後、純資産配当率2〜3%程度を目標とする「平均的サービス業水準」へ回帰できる可能性があります。
特に、ライブエンタメ・デジタルコンテンツ市場の拡大は同社にとって追い風であり、財務再建が完了すれば、配当原資の確保も見込めます。

ただし、その前提としては以下の条件が必要です。

  • 継続企業の前提に関する疑義の完全解消
  • MX・EX両事業の黒字安定化
  • 過去の欠損金の解消と税効果の発現
  • 株式市場からの信頼回復(株価・流動性の回復)

これらが達成されるまでは、配当再開の道は険しいと言わざるを得ません。

投資家目線での評価と戦略的考察

個人投資家や配当重視のFIRE志向投資家にとって、Birdmanは現時点では「インカム狙い」ではなく「再生株・リバイバル投資枠」として位置づけるべき銘柄です。

現状の株主還元はゼロですが、裏を返せば「将来の成長にすべてのリソースを再投資している」企業とも言えます。特に、MX事業でのデジタルマーケティング支援(Web3・AI関連領域)は業界トレンドに合致しており、事業が立ち上がれば高利益率モデルへの転換も期待できます。

また、EX事業のライブ・アーティスト領域では、国内外の音楽・イベント市場が回復しており、成功すれば安定したキャッシュフローを生み出す可能性があります。これが将来的な配当原資となるでしょう。

長期的には、以下のような投資シナリオが考えられます。

投資スタンス投資目的リスク許容度期待リターン
短期(〜2年)企業再建による株価反発配当なし/値上がり狙い
中期(3〜5年)黒字転換・初回配当によるシグナル効果小規模配当+株価上昇
長期(5年以上)成熟型サービス業としての安定配当年2〜3%のインカム収益

長期配当投資評価

レーティング評価:

評価コメント

株式会社Birdmanは、長期投資による長期配当を目的とした投資先としては極めてリスクが高く、現時点ではおすすめできない銘柄です。評価基準である「配当利回り」「配当の持続性」「連続増配」という3つの観点から見ても、いずれも現状では日本株の中で最低水準に位置しています。

まず、配当利回りについてですが、同社は上場以来一度も配当を実施しておらず、実質的な利回りは0%です。サービス業の平均配当利回り(約2.3%)や、安定配当を誇る国内大手企業(JT・三菱HCキャピタル・花王などが3〜5%台)と比較すると、その差は決定的です。仮に将来黒字転換しても、累積損失の解消を優先する必要があるため、実際に配当を得られるまでには相当な時間がかかると考えられます。

次に、配当の持続性です。Birdmanの財務状況は依然として不安定で、2025年6月期の有価証券報告書でも「継続企業の前提に重要な疑義が存在」と記載されています。これは企業の存続可能性そのものに監査法人が懸念を示している状態であり、安定的なキャッシュフローが確立されていないことを意味します。仮に今後黒字転換したとしても、短期的な景気変動や大型案件の有無によって業績が大きく変動する構造的リスクを抱えています。このため、配当を出せるとしても「一時的」なものにとどまり、持続的な配当政策を築くには数年単位の再建が必要と見られます。

最後に、連続増配の実績はゼロです。過去5期にわたり無配を継続しており、配当性向・DOE(自己資本配当率)いずれも0%のままです。したがって、「安定配当」や「増配期待」を重視する長期投資家にとっては、投資魅力は極めて乏しいといえます。日本株市場全体では、連続増配を続ける企業(例:花王、伊藤忠商事、KDDIなど)が多数存在し、これらは10年以上にわたり安定的に株主還元を行っています。これらの優良企業と比較すると、Birdmanは配当履歴・安定性・信頼性のいずれも大きく劣後します。

ただし、将来的な成長ポテンシャルが皆無というわけではありません。エンターテインメント×テクノロジー領域という成長市場に位置しており、事業再建が進めば長期的にキャッシュ創出能力を高める可能性もあります。しかし、現段階では配当を狙う長期投資対象ではなく、「事業再生・株価反発狙いの短中期投資」向けの位置付けにとどまります。

結論として、長期配当を重視する投資家にとってBirdmanは現時点で★1(最低評価)です。配当利回りゼロ、持続性不安、増配実績なしという“三重のマイナス要因”を抱えており、配当株としての魅力は極めて限定的です。